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密室の鍵貸します/東川篤也/文庫
面白かった。
同じ作者では「謎解きはディナーのあとに」「放課後はミステリー」を先に読んだのだけれど、そこからの期待に違わない感じの面白さだった。
あらすじ。
大学三年生の主人公は、付き合っていた彼女に壮絶にフラれる。
ショックではあったものの、一応ふっ切って日常を送っていたのに、なんと彼女が殺されてしまった。
自分に掛かっている容疑を解くには、密室の謎を説き明かすしかない!?
東川篤也の長編本格ミステリ。
先に挙げた二冊と決定的に違うのは、これは長編だということ。
同じ作者でも長編が上手かったり短編の方が圧倒的に面白かったり、両方面白いとしたら作風が違うのが当たり前だと思うのだが、東川篤也はすごい。
短編のテンポのよさ、余計な描写を省きまくった勢いのある流れ、しかもそういう切り詰められた中で伏線張りまくりーの回収ーの。
こんな風に言うと息が詰まりそうな話のようだ。けれども語り口がごく軽快で、読み出すと止まらない。
…というのを長編でもやっている。実現している。
先に読んだのが短編の方なので短編基準の言い方をしたが、「密室の鍵貸します」はデビュー作らしいので、さくさく気持ちいい長編書いてたけど短編に詰め込んでみたらそっちも面白かったね、が正解かもしれない。
短編との違いとしては、この作品では特徴的な多視点描写を用いている。
主人公視点(これはワトソンサイドだ)と刑事視点(これも二人組のワトソンの方だ)、更にその二つを繋ぐ"神"の視点。
この3つを効果的に使い分けることによってテンポのよい、含みのある流れができ、
つい続きが読みたくなるような物語になっている。
THE QUIZ/椙本孝思/アルファポリス文庫
後味の悪い準ホラーだった。
何が準かってーと、状況がミステリアスで内容が残虐なだけで、怖さを追求してないから。
怖さにこだわらないのは狙ってのことだと思うけれど、相応しい分類を知らないので。
舞台は現代の日本
登場人物はテレビ局のスタジオに閉じ込められて命懸けのクイズに参加する。ただしリタイアはできない。
こういう密室系サスペンスには、リアリティはあまり必要でない。
テレビ局で携帯使えなくはならなくね?とかそういう無理はやってもいい。
だけど説得力は必要だ。どんな異常な設営でも、じゃあしょうがないよなあ。と読者に思わせられれば勝ち(?)。なのだけど。
つまりどーも納得出来なかった。
だからなんとなくむずむずしながら、でも続きが気になる、最後まで読みたいという気持ちにはさせる。そういう感じ。
エンタメですし(多分)読んで後悔はしないと思われます。
以下ネタバレ含む
老人と海/ヘミングウェイ著/訳
面白かった。
「ヘミングウェイ」も「老人と海」も、誰しも聞いたことはあるだろうが、読んだことはあるだろうか。
あるいは、国語の教科書に載っていたかもしれない。
教科書とは、自ら進んでは手に取らないような本との良い出会いをもたらしてくれる癖に、
そのせっかくの出会いを味気ないものに変えてしまうことも得意ときた。
変に文学とか意識させず、普通に読ませればいいのになあ、と思う。
ヘミングウェイのこの小説は、老人と海、なんていう、この上なくしおたれたタイトルでありながら、その辺の冒険小説と遜色ないような、海に生きる男達の激しい戦いの記録であったりする。
という読み方も出来るし
地元の寂れた商店街を思い出さずにはいられないような、人生の盛衰を描いた、哀愁漂う物語であったりする。
という見方も出来る。
…どっちにせよハードボイルドである。
物語の終盤はもう、あとどうなるかわかってしまって、辛くて続きが読みたくないほどだった。
でもせめて見届けるべきだ、あんたのことは私が知っている、という思いで(大袈裟だなあ)、読み終えた。
でも帰って来たおじいさんを迎える人々の姿は少し暖かかった。
だから話の結末は、一般的には「現実は非情」なんだろうが、個人的には人の心の繋がりに、救いの見いだせる終わり方だと解釈した。
幸福な食卓/瀬尾まいこ/講談社文庫
「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」
これは小説の出だしである。かなりショッキングだ。
どういう小説か。
読後の身でも、説明に困る。
一言でいうなら「泣ける」。
(他人がどう思うかは知らないが、これは自分にとって重大な事実である。電車で本を読みながら笑う人はちょっと変な人だが、泣く人は何か大変なことになっている人の確率が高いからだ。この本が「泣ける」ということを、誰か予め教えてほしかった。まあそれは済んだことで。)
内容。
どこにでもありそうな四人家族の、父は自殺未遂、母はノイローゼ、兄は天才をこじらせ、なんとか真っ当に生きようとしている妹が主人公である。
設定が重たい、超重たい。
そこであの出だしである。正直なかなか読みたくならなかった。
ところが読み始めるとそうでもない。
それぞれ抱えているものは大きくても、傷を常にさらけ出し、陰々滅々と生きてるわけではない。当たり前なのかもしれないけど大事なことだ。
そりゃもちろん、ひどく落ち込むこともあるけれど、自分とだけ向き合って生きていくわけにはいかないんだな。
と、最後には前向きになれるので、ゆっくり最後まで腰を据えて読みたい本でした。
雑感。
人が死ぬことは、人が死んだという歴然とした事実があるにも関わらず、
どういうわけか頭で理解することができない現象だ。
それなのに、誰も練習したことなしに、大切な人との別れに向き合わなければならない。
その時を誰も教えておいてはくれない。
考えておくことが出来るというだけでも、本を読むのは貴重なことだななどと思った。
かもめ食堂/群ようこ/幻冬社文庫
面白かった。
絵本のようにライトでかわいらしい小説だった。
登場人物はみんな、なにかしらしょっているのに、読んでいて穏やかな気持ちになる。それはヘルシンキの土地がなせるのか、サチコさんの人柄がなせるのか。
世の中のシビアなことを思い出させられやるせない気持ちになったと思えば、キュートな描写で笑ってしまう。ころっころの、かもめ!
枕元に置いておいて、寝る前に読み返すのにすごくいい。
また、中年になったら読みたいですね。
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