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2024/04/29

死刑執行人サンソン

■表題「死刑執行人サンソン」/著作:安達正勝/集英社新書

■目次
序章・呪われた一族/第一章・国王陛下ルイ十六世に拝謁/第二章・ギロチン誕生の物語/第三章・神々は渇く/第四章・前国王ルイ・カペーの処刑/終章・その日は来たらず

■集英社から出ている漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の登場人物のモデルになった人物がサンソンである、と聞いて読んでみた。
薦めてくれた人が残酷だ残酷だというから、かなり心して読んだのだが…普通に面白かった。
結論から言うと著者は「死刑制度はなくすべきだ」というサンソン自身の考えを重んじており、
従って著作の内容も残酷趣味を満たすためのものではないからだ。

内容を一言で言うと、死刑執行人サンソン一族の推移をたどりながら、中世フランスにおける死刑制度とギロチンの誕生経緯を紹介している。
主題が主題だけに、胸が悪くなるような凄惨なことも書かれているけれど、初めに言ったとおり、別に残虐趣味で書かれているわけではないので、表現は簡潔で、執行人の悲痛な心情も合わせてあり、普通に読むことができる。
残酷なものを読みたいならばむしろお勧めしない。

専門家ではない自分には、死刑執行人の立場から見たフランス革命の描写がとても興味深かった。
フランス革命といえば市民が王政を倒して共和国となった世界史上非常に重要な事件である。
革命の主体は市民であり、勝ったのも市民である。王家は贅沢限りをして悲惨な末路を辿ったとしか、教科書でしか歴史を学んでいない私は、知らなかった。
しかしこの本では「革命は必要」と考え、国王に忠誠なサンソン一族の視点からフランス人が書かれている。
当のルイ十六世に実際に会ってその威厳に圧倒され、革命の空気に酔った国民の行き過ぎた行動を批判的に見、敬愛する国王を最終的に自分の手に掛けざるを得なかったアンリ・サンソン。
声も出ないようなものすごい話である。
おそらくこのくだりがこの本のクライマックスだった。
この後はサンソンの訴えを中心に、フランスにおける死刑制度の幕閉じを綴って終わる。

戻るが、この話の要は、死刑に実際に手を下した人間が「死刑制度はなくすべきだ」と考えていることである。
作中でもたびたびいわれている通り、当時のフランス市民は、死刑に関して非常に無責任で無自覚である。
「執行人を疎む市民」についての叙述があり、しかもその市民は死刑は必要だと考えている。

ギロチン自体もう使われていなく、まるで実感のない話だと感じられるかもしれない。
だが日本にはまだ死刑制度があるし、これから裁判員制度が始まると、実感がないどころではない。
死刑判決を出すことは、間接的でしかも連帯とはいえ、自分が人を殺すことである。
裁判員制度が始まる前だって、専門家に任せているだけであって、死刑判決を多くの人々は求めている。
たとえ相手がどんな極悪人であろうと、人が人を殺すことに変わりはないのにだ。

ただ、必要悪という言葉もある。
突き詰めれば人が人を裁いても良いのか、ということにもなってしまう。
こと死刑について、良いとか悪いとか出来るとか出来ないとか、一人一人には決められない。
だからといって、考えなくて良いわけではない。
無自覚で無責任な市民になってはいけないのであって、そのことを考えるきっかけになるいい本だった。
というところで感想を終えたいと思う。ご清聴ありがとうございました。

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2008/05/20 読後感想 Trackback() Comment(0)

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