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アドレナリン・ブレイク(原題:BAD DAY)/イアン・デイヴィッド・ディアス/2008 イギリス
よかった。
しかしながら、この手の作品は数見ないので、コメントに困る。
ドキュメンタリ・タッチの映画である。独特のカメラワークと少ないBGM(音楽が使われたのは最初の場面二つとOP、EDだけ)によって不思議な気持ちになる。
その割には何故か退屈しなかった。
カット回しが優れて良いのだと思う。
邦題はある程度優れている。原題は、作中でも台詞として使われているが、「最悪の日」とでもいう。訳せばつまらない。訳さなくともそう印象的ではない。
アドレナリンブレイクというタイトルは、興奮させる展開を予想させる。或いは暴力の過ぎるこの作品を表した良いタイトルである。だが見終わっての感は、その題は的確ではない。
ずいぶん言葉が汚い。こんなに罵詈雑言を聞くことは、フランクなアメリカ映画でも少ない。聞かないだけで、向こうでは普通なのかなとも思う。字幕や吹き替えと比べながら聞くと、日本語って悪口の語彙がほとんどねぇんじゃねぇか、とすら感じるからだ。
言葉が汚いだけでなく、暴力も表現が荒っぽい。度が過ぎているというのではない。例えば顔を殴るにしたって、口が切れて血が出て頬が腫れて歯が折れて殴られた方はそれを舌で探して吐き出す。まで映す。
こういうのには本当に慣れていない。映画における暴力というのは映像の進化に遅れていて、記号化されているのだろう。殴るなら殴った、怪我をしたという事実があるだけで、殴った方の手がなんともないことすらよくあること。それで普通というか、当たり前と感じてしまうのは、何か創作的世界に毒されているのではないか。
(映画における、と言ったが、一般に映像全体の傾向だろう。)
翻ってBadDayでは、因果や禍根でなく暴力そのものをフィルムに収めるのが目的ではないかと思える。その上BGMもないものだから、変な叙情が入り込む余地はないし、身体を痛め付けた時に起こる"音"が耳に突き刺さる。記号的でない、実際には呆気ないような、妙にコミカルな音である。
そういった意味で、写実的な作品だと言える。現実はハードボイルドなのだ。
さて、どこ見てるんだと言われそうなことばかり書いて来て、粗筋に何も触れていないのだが、仕方ない。ストーリーはたいして問題ではない。言っておくべきことがあるとしたら、バッドエンドなことぐらいだろう。
レベッカ(主人公)は、その日全てを失ったのだ。
エンディングに近いシーンが冒頭と重なっているので、見終わってもう一回見ると、最初のシーンに震えた。
「神様、どうか助けてください」という台詞に込められた想いは、想像するのに難しいものじゃない。
しかしその内容は、初めに想像したものと違っていた。
もう一回観たい、と思った。
お気に入りのシーンを一つ。
レベッカがハリーと共にマーラと対決するシーンが印象的だった。
ハリーとマーラの手下がお互いに狙いを定め、一触即発となる場面。
これが普通のアクション映画なら、ハリーが最高にかっこいい反撃を決めて、あっという間に手下を倒し、マーラと魂のやり取りをしてから留めを刺すだろう。或いはこれがラブロマンスなら、タイミングよく踏み込んで来た警官隊に驚いた手下が発砲し、撃たれたが一命を取り留めるハリー、真実を知ったレベッカは罪を償って二人で生きていく決心をするだろう。
…そういう展開を強く期待してしまう自分がいた。
そんな結末が訪れないことは、強く感じられるにも関わらず。
心を強く持ちたいと思った。
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