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原題:テルマ&ルイーズ/リドリー・スコット/1991.アメリカ
驚くほどよかった。
ちょっと古い映画だけどすげー面白かった。
今回の感想はネタバレ全開で行きます。
主人公二人が状況に流されて罪を重ねていくストーリー。
犯罪映画ながら底抜け感があって、楽しく見られた。
主人公の女の子二人は、ワルではないがいい人でも勿論なく、マンネリと退屈を持て余し、賢くもなく、まあ要するに普通の人間である。
退屈しのぎに羽をのばしていたところ、一人が悪漢に襲われ、怒りに任せて相手を誅すところから話が始まる。
犯罪者が本当に悪者か?
第三者から見た「犯罪者」の側面と、当事者にとっての「こうするしかなかった」的側面から、リアルな犯罪者像を見せられ、非常に悩ましい。と思うのは私が軟弱者だからだろうか。
成り行きで犯罪を重ねていく様は盛り沢山に描かれていく。
ブラット・ピットが逃走資金を掠め取るくだりなんか、悪者に騙されるシーンなのに大層めろめろしく、犯罪者がときに被害者である一面が綺麗に出ていて好きだ。
しかし逃亡に次ぐ逃亡でどんどん罪が重くなっていく様は、彼女らの思慮が浅いと言ってしまえばそれはそうなんだけど、じゃあその間違った判断をすることは悪いことなのか?と問われればそんなことは言えない。
特に今の日本に住んでると、逃げるなんて馬鹿だなあ、すぐに自首すればよかったのに、どうせ逃げ切れやしないし。という風に思うけれど、
そこへ作中のテルマの台詞、「どうしても連想してしまうの。拷問、電気椅子ってね」が突き刺さる。
真実が揺るぎないとしても、一体誰が取り調べや刑罰を好むのか?仮に全く無罪だとしても、裁判やらの過程で拘束され、厳しい言葉を投げられ、プライベートを衆目に晒されることは耐え難いだろう。
それでも逃げ切れないことはわかっていたかもしれない。
二人の行く末を想う。
主人公たちの立場からストーリーを追って来た身では、二人を許してあげてほしいと思いながら、
なりゆきであってもあれだけの犯罪を行った二人を、社会的にまったく許すわけにはいかないと、客観的に考えれば、なる。
許されもしない、断罪もできない、二人が最後に旅立っていったのは、必然の帰結であり、この上なく美しいラストだった。
その時、その時の二人の心境を想像すると、震えが止まらない。
箱庭図書館/乙一、他/
話の善し悪し以前に言いたいことがある。
これは短編集ではなくアンソロジーだ。
どういうことかというと
そもそもは作家自身のウェブの企画で、読者の没原稿をリサイクルするよ!というのを書籍化したものだから。
話によっては文章をそのまま使っている部分もある。
というようなことは全部あとがきに書いてあるのでそちらを是非。
実はこの本の企画については、まったく知らずに購入した。
書店でおや乙一、と思って買ったのだ。
だからこれから買おうとしているファンに忠告。中身を見てから買ったがいいと思います。
そんなこといっておきながら、中身は面白かった。乙一だと思って構えるのがいけませんね。
話の一つ一つに個性が強く出ているから、どう面白いと一口で言えないのが残念、というか特徴かな。
いっこいっこ言ってくととてもキリない。
その割に全体に繋がりと流れがあって、一冊で一塊の物語、という感じ。乙一のそういう一ひねり入れてくるところがすごく好きだなあ。
原作者たちの清々しい(時に鬱屈・笑)空気があってよい青春を感じました。感想おしまい。
図書館戦争/有川浩/角川文庫
面白いっすよ、これ。
最近読んだ本の中で一番面白かった。
(さてはてその最近とはいつからいつまでなのかな!)
ペンは剣よりも強し。
本を愛する人がただの文字列の持つ価値に妥協を許さないことは暴力的なまでである。
読者諸賢ご存知のとおり。
その愛の気高さの前に、人は泣いたり怒ったり、悩んだり悔やんだり。
詰りあったり喚いたり。
恋をしたり喧嘩をしたり。
電車で読んだのは失敗だったと言わざるを得ないほど、読んでるこちらも笑ったり笑ったり泣いたりしてしまった。
そう思ったなら途中で読むのを諦めればいいのに、やめられないほど面白かったのであった。
いいから読んでみろ!面白いから!の類でした。
もしこの本が頭から苦手な人がいるとしたら、
戦争とタイトルにつくだけあって、名前のないような登場人物がばんばん負傷する。死んでいるかもしれない。
そういった事態に心を痛めて、とても読んでいられないという平和で純粋な人くらいだろう。
Knowing//アメリカ
いやだなあ。
50年前に埋められたタイムカプセルから、未来のことを示した数字の書かれた紙が出て来る―という粗筋から、パニックSFミステリーな感じの映画を想像して見てしまったのだが。
期待に沿わない映画であった。
主人公である宇宙物理学者、ジョンは冒頭で二つの説を提示する。
未来決定論…という名前かどうかは知らないが、全ての物質の運動は予測できる、つまり未来は決定済みだという、物理学的に根拠のある説。
逆に、ランダム理論という、未来は決まっていないし、起こること全てに意味はない(そこはジョンの主観)、という説。
ジョンは過去に妻を亡くしたことから、ランダム理論の支持者となっていた。
しかし未来を示した紙切れを見て、未来は実は決まっており、そこから一人息子を守ることができるのではないか、と思い始める。
…作中で予定されていたとされる事件、事故、災害は911テロや阪神大震災、その他おそらく当事者にとって一目見れば恐怖を引き起こさずにいられないような有名な写真で映され、
新しく起こる事故は非常にショッキングな映像で五感から激情を叩き付けられる。
特長的なのは悲鳴、と事故に遭った人達の助けを求める姿。
こんなにひとは悲鳴をあげるだろうか。あげるかもしれない。事態が壮絶過ぎて想像することもできないが、どうしていいかわからなくなるほど悲痛な場面が続く。
ここまではいい。人に衝撃を与えることに成功したという意味で、優れて良いと思う。
しかしここから持ってくる結論が、未来は決まっていて神の御意志である。人間は失敗したのでノアの方舟もっかいやります。…である。話にならない。文字通りの意味で、話にならない。
ただショッキングな映像を見せ、観客が動揺したところで神の提示というのは、宗教の悪質な勧誘によく使われる手じゃないの。
しかもこのラストでは、布教の意味でも失敗だ。
ノアの方舟二回もやるの?全知全能の神が??
ついでに…個人的な好みで大天使の造形がよくない。
なにあのマトリックスリローデッドみたいな…口から破壊光線だし…。
天使というのは見た目は人とも似ているが、真実のために時に人に非情。なのは知っているけれど、
あんなに不審者みたいな行動をする必要があるか?もっと啓示っぽいことしてもよかったんじゃないのか?
総括して、残念な映画だった。
前半で掴んだ心をそのままぶん投げられた感じ。
光る目/ジョン・カーペンター/1995.アメリカ
何かなーと思ったらSF?
…いやホラー?
いかんせん古い映画なので、作りにぞんざいさを感じてしまってイマイチ入り込めなかった感。
人間じゃないことを表す表現が(髪とか)、技術的に限界だろうけど、不自然で気になって仕方なかった。
そのかわりえらくかわいらしいなと…感じるシーンが多い。子供がたくさん出て来るから。
その子供達が怖いんだけど、いかにもあどけなくてつい和んでしまう。
話自体は意外と痛烈で、知り合いが焼けるシーンとか大人は汚いとか、見た目にも心にも苦痛のある場面があって辛かった。
実は昔見たのを思い出しながら書いてるんで、おかしなところがあるかもしれない。
なんで急にかっていうと、最近読んだラノベに出て来て、あれって文章に引き合いに出される類の映画だっけ?と思ったので。
何が気に入らないって、最後に出て来た゛本体゛のリアリティのなさが。
エイリアンの正体が明かされて一番盛り上がるところで「えっ」てなる。気持ちのやり場がない。
あんなに人形っぽいものをよくもそのまま映したもんだ。潔いわ。
でも霊と魂を一つしか持たないひとのかたちをした集団、という話の根幹が素敵。
ここまで書いてから調べてみたら、これ自体リメイクだった。
原作を読んでみようと思います。